「私の欲しいものはあなたには決して出せない」
千と千尋の神隠しで主人公の千尋がカオナシに向かって言う印象的な台詞の一つだ。
案外この台詞は何に対しても当て嵌るのかもしれないと私は思う。本当に欲しいものを他から得られることなぞ多分無いのだと。何か物質的なものが手に入ったとてそこから自分が何を得られるのか。
恐らく何かを得ること自体はきっと難しいことではないのだ。その後自分がどう生きるのか、物事の本質はそこにあるような気がして私はならない。
当時映画を観た時の私は何も分かっていなかった。千尋には欲しいものがあるけど、何かは分からないがそれはカオナシには出せないのだと。きっと物質的なものでは無い、何となくそう感じていた。
今ならそれは豚になってしまった両親のことだったのだろうと推察することはできる。けれどももしそうだったとして、果たしてカオナシにそれは出すことはできないのか。恐ろしい話だが私は可能だと思っている。それは人間もまた地球上の物質に過ぎないからだ。
しかし本当の意味で千尋の欲しいもの、とはきっと言えないのだろうなとも思う。千尋の本当の欲しいものは千尋自身がこの物語をクリアし、自分の力で得なければ、それは永遠に叶わないのだ。
要は心の持ちようなのだと私は思う。人間の欲には際限がない。今ここにあるもの、これから得ていくものに対してどう向き合っていくか。
その答えをきっと一生賭けて探していくのだと思う。
7/22/2024, 12:18:51 AM