『愛と』
私はもう、長くない。
それは私が一番分かっている。
こんな私のために泣いてくれる貴方が居たから、
私は今まで頑張ってこれた。
でもそろそろ、頑張りだけじゃ無理そうだ。
心意気とは反対にどんどんやつれていく私を見て、
貴方はまた涙を流した。
「死なないで」とたくさん言われた。
それと同じくらい、
「僕が泣くのはダメだ」と言う。
そしてさらに、
「君が一番生きたいって思ってるのを知っている」とも言われる。
私一人なら、この人生も受け入れられただろうな、と思う。でも、貴方が居る。まだ貴方と居たいから、この人生を悔やんでいる。
どうして私なのか、ずっと。
それから1ヶ月を過ぎた頃。私は医者にすごい生命力だと言われていた。余命宣告を受けた日数をだいぶ過ぎたからだった。思わず笑ってしまった。
でもやはり、体の方は限界だったようで。
あ、今日私、死ぬんだな。と直感的に思った。
「………ごめんね。ずっと生きられなくて。
私、貴方のそばに居たかった。貴方を一人にするのがとても心配。でもどうか、幸せになって欲しい。貴方の幸せは、私の幸せっていつも言っているでしょう?
………泣かないで、最後くらいは笑って?」
そう伝えても、貴方は泣くばかりだった。
泣きながら、
「ぼ、ぼくも君のそばに居たい!!
ぼくの幸せは君がそばに居ることなのに
…幸せになれないよ。」
「そういうところも大好きよ。
ごめんね、今までありがとう。」
これが、私がさよならを言う前に告げたこと。
お題:《さよならを言う前に》
8/20/2023, 2:58:38 PM