君が見た夢
君が見た夢は有罪だった。
「被告人は夢の中で一方的にキスをした。よって有罪である」
「ちょっと待ってください」
君は必死に弁明する。
「夢に見たからって誰が困るんですか」
「困るものは困るんだ。なにより彼女を照れさせた」
裁判長がわたしに目を向けた。思わずむっとする。
「照れてません」
「いいや照れた。私を差し置いて……言語道断である」
「照れてないってば!」
わたしはムキになった。
「そういう裁判長はどうなんですか。わたしのことを夢に見ないと?」
「見るものか」
「あそう」
わたしは冷ややかに言った。
「その程度の恋なんだ」
「……撤回する。私は毎日のように夢に見ている」
裁判長は現行犯でタイホされていった。
2人で裁判所を出て、勝訴の文字を掲げる。
君の横顔が嬉しくて、わたしはその頬にキスをした。
12/16/2025, 10:57:05 PM