「良いお年を」
そう言って25日に別れたはずなのに……
「お前なんでここにいんだよ」
「んふふ……来ちゃった」
気持ち悪い笑みをながら手を振る友達の姿があった。
今日は今年最後のバイトの日。22時をまわり暗闇の中、ぶかぶかのスーツをだらしなく着た男が街頭に照らされぼんやりと浮かんでいた。
「来ちゃった、じゃねーんだよ。その格好、お前だってバイト終わりだろ。早く帰れ」
「そんなこといって〜、嬉しいくせに」
がしりと抱きつき、ぎゅうぎゅうと体重をかけてくる。
隣の家の黒い大きな犬みたいだ。
「おい、メガネが顔に食い込む。いてーんだよ」
引き離そうともがくと、より一層力をかけてくる。観念して力を抜くと、ようやく体が離れた。
「お前、ほんとどうした」
ズレたメガネを直しながら聞くと、
「んー?鐘つきに行こ」肩に腕を回しながら言う。
「は?お前今日30日だよ、鐘なら明日だろ」
反射的にそう答えると、にやっと笑みを深めて、
「じゃあ明日な、明日お前の家まで迎えに行く」
それだけ言うと、じゃあと走り去って行った。
そのあまりの素早さに呆然と見送ることしかできなかった。
1/1/2025, 8:27:08 AM