「今日も雨だったから、洗濯物が乾かなくて困ったわ。」
「天気の話なんて」
「明日も雨らしいわね。
梅雨に入ったのかしらね。」
「天気の話なんて
どうだっていいんだ。」
「今週は火曜からずっと雨ですって。去年もゲリラ豪雨が全国あちこちで発生したでしょ。」
「天気の話なんて
どうだっていいんだ。
僕が話したいことは、」
「もう3日も降り続いてるし、川の増水が心配だわ。この辺りは沈むことはなくても、お買い物に行けなくなるでしょ。」
「天気の話なんて
どうだっていいんだ。
僕が話したいことは、
今度の日曜」
「土曜までは雨が続くでしょって、天気予報で言ってたもの。日曜には晴れるらしいけど。こんなに降り続くなんて。」
「天気の話なんて
どうだっていいんだ。
僕が話したいことは、
今度の日曜に
釣りに行ってもいいか
ってこと。」
ようやく僕は一気に話すことができた。
「あら」
妻が眼を丸くして僕を見る。
「あなた、私の話きいてた?
土曜まで雨が降り続くのに、淡水が大量に流れ込む沿岸で海水魚が釣れるわけないでしょう?みんな沖に逃げてるわ。お天気の話は大事なのよ。どうだっていいだなんて、バカにしないことね。じゃあ洗い物よろしくね。私は今から韓国ドラマの時間だから。」
妻が畳み掛けるように
勝ち誇ったように
ヒラヒラと手を振って、
PCモニターに向いイヤホンを嵌め
コーヒーに手を伸ばした。
僕は返す言葉もなく
潔く負けを認め
グズグズと立ち上がって、
シンクに向いゴム手袋を嵌めて
スポンジに手を伸ばした。
5/31/2023, 1:19:34 PM