月風穂

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【木枯らし】

「木枯らしってどういう意味?」
「あぁ秋から冬に吹く風だよ。」
辞書よりも面白味のない回答だ。金田一秀穂も真っ青である。
もっと洒落た返答を期待したいものである。
「なんで木枯らしって言うんだろうね。」
深く純粋な眼差しを向けられた私には、その好奇心を埋められるほどの知性はなかった。

言われてみればそうだ。
なぜたかが冬への移行時期に吹く風に「木枯らし」という称号が与えられているのか。
なぜ「木枯らし」というのだろう。
そこで私は「木枯らし」という名前が付けられた理由を考えてみる。
冬が好きと豪語している私には、理由を考える権利というものがあるだろう。

さて、「木枯らし」くんと真正面に話し合おうではないか。
木を枯らすと書いて「木枯らし」
なんと恐ろしい言葉の並びだろうか。
これを命名した人が、「木枯らし」という行為にどれほど憤りを感じていたのかがうかがえる。

「秋の末から冬の初めにかけて吹く強く冷たい風。」
というのが正式な意味らしい。
秋から冬に移行するなかで、木々も寒さから葉を落とす。
強い風が吹き、まるで風が木を枯らしたかのように見える様から名付けられたにちがいない。
殺伐とした冬の寒気がもうすぐやってくるぞ!人間よりも先に木葉がやられたぞ!とでも言いたいのだろう。
「木枯らし」では人を枯らすことはできないのだ。
「人枯らし」はむしろ夏だよなぁと思うと、木と人間は反対の性質を持っているようで、木を讃えたくなる。

ということで「木枯らし」は「人を枯らすことはできないが、人よりも強靭な木から葉を落とすことができる、これから訪れる冬を感じさせる力強い風。」という説明がまっとうではないだろうか。

…。
木を枯らすのは風ではなく火じゃないか…?

1/17/2024, 12:25:48 PM