髪を櫛で梳く従姉妹の手の心地よさに目が細まる。
「ちょっと、みかん食べながら寝ないでよ。寝るなら布団で寝なさい」
手を止めないまま従姉妹に言われ、閉じかけた瞼に力を入れる。
意識しないと、すぐに寝てしまいそうだ。
仕方がないと、心の中で言い訳をする。
暖かい部屋。暖かいこたつ。従姉妹の手の心地よさ。これで寝るなという方が難しい。
みかんを一房口に入れる。酸味と甘さが口の中に広がり、口元が緩む。ふわふわとした気持ちに、益々瞼が閉じていく。
「だから、食べながら寝ないの……ほら、ちゃんと綺麗に結んであげたんだから、起きなさい」
従姉妹の手が離れ、目を開けた。目の前に置かれた卓上の鏡に視線を向ける。
綺麗に結えられた髪。白のリボンが結ばれていることがどこか気恥ずかしいながらも嬉しくて、小さく笑みが浮かんだ。
だがすぐに、笑みは驚きと恐怖に引き攣った。
「どうしたの?」
不思議そうな従姉妹の声に、彼女には見えていないのだと悟る。
きっとこれは、自分にしか見えないのだろう。
白いリボンの不自然に伸びた端の先。自分の背後。
無表情に佇む幼い頃の自分の手首に、リボンは巻き付いていた。
12/21/2025, 12:16:43 PM