そんじゅ

Open App

いくら愛しく思おうと、渡せるものは二物まで。
魂への贈り物は三物、四物とたくさん与えて過ぎてはならないのだと神が納得したのは、目をかけていた人の子が三人続けて早逝してからだった。

知力、体力、時の運、そして才能のパラメータは神の力をもって全て最大値に設定。時の運内部の隠しステータス配分も、天の時、地の利、人の和をきっちり三等分した上で、幸運には生存中無期限のバフをかける。

そうして地上に立たせた一人目は、大いに周囲の妬みを買って、ある日崖から突き落とされて死んでしまった。たくさんの贈り物を持たせたが、初めから持っていた不幸を取り上げてやることはできなかったのだ。

二人目は何故か大成しなかった。持って生まれた器量を活かして成り上がったものの、過分な聡明さが仇となった。今生も所詮は一炊の夢と現実否定し、早々に自ら天上へ戻ってきてしまった。神の御元で魂は「何でもすぐ分かった気になる自分を良しと思えませんでした」と静かにぼやいていた。

そして三人目はなんと五つにもならぬうちに、風邪をこじらせてあっさり死んでしまった。聞けば、あまりに可愛らしい人間が居ると聞いた他所の神が、さっさと天上へ連れてきてしまったのだという。

えい、儘ならぬものは仕方がない。

過ぎたことに執着しないこの神は、次は賽を手にした。
偶然の荒波に翻弄される人々の様を眺めていれば、千年は瞬きほどの間。面白い出来事の一つや二つ、きっと起こるに違いない。


************
「夢と現実」

************
所感:
お題を綺麗に文章の中へ嵌め込むことだけ考えていたらこうなりました。悪い神様も居たもんだ。

12/5/2022, 10:25:01 PM