また会いましょう
虫の知らせ、というのは本当らしい。
ふと、唐突に頭によぎった懐かしい顔。
その名が紙面の訃報欄に載っていたのに気がついた時、外では蝉ではなく鈴虫が鳴いていた。
逝ってしまった、という寂しさと置いていかれたという切なさは両立する感情なのだ。またね、と別れてからなんとなく疎遠になってしまった。そんなものか、そんなものなのかもしれないな。妙に落ち着かない気持ちで誌面を読み込む。
葬儀の日にちを確かめてカレンダーを見た。
最後に人目でも会いたい、そう思った。
その日は晴れやかな快晴の日だった。
大空に澄み渡るような青が広がっている。
まるで初夏のよう。心温かな貴方の笑顔みたいね。
喪服に履き慣れない黒のパンプスで会場に向かう。
遺影には懐かしい笑顔。そうそう、貴方はとても笑顔の似合う人だった。私の最初のお友達。
歳をとって生活に追われて少し離れてしまったけれど、私たちはずっと一緒に笑い合っていた。
手に持った花を捧げて手を合わせる。
祈る言葉は尽きなくて、会いたい気持ちも尽きなくて、会おうと思えば会えたはずなのに、『いつか』が『いつまでも』あるとそう知らずに信じていた。
まなじりに浮かぶ雫は哀しみではなくて『あい』でありたい。いずれそちらに向かうとき、今度こそは違えぬ約束を果たしましょう。
果たせなかったまたねの約束を改めまして。
棺に向かって一つだけ、最後の約束の更新を。
11/13/2024, 12:02:45 PM