小説
迅嵐
日陰から救い出してくれる人を待っている。まるで体に鉛玉を飼っているかのような重みに耐えかねて、おれは膝から崩れ落ちた。
自ら動く事は出来ず、受け身でしかいられない。
そんなおれを救い出してくれる人を、おれは待っている。
「日陰もいいじゃないか」
太陽みたいなお前ははそう言った。座り込んだおれの隣に座り、無邪気に言った。
お前は太陽の下でしか生きたことがないからそう言えるんだ。
そんな屁理屈を軽々と躱し、お前はおれの手をゆっくりと握る。
それは大切な宝物を扱うかのように。
「迅と居れるなら、日当でも日陰でも良いよ」
日陰から出なくても良いと初めて思った。お前が、嵐山が一緒ならば。
おれは引きずり込んだ。暗い暗い日陰の中へ。
これからはここで二人きり闇の中。
嗚呼嬉しい……誰もここから救い出さないでくれよ!
1/29/2025, 12:45:44 PM