「ラララララ♪」
今日も森の方から、美しい歌声が聞こえてくる。
この声の持ち主は、一体誰なんだろう。
…顔も知らない少女のことを、声だけで好きになってしまうなんて。
彼女が歌うこのメロディー、なんだか懐かしい。
なぜだろう。いつ聴いたのだろう。
僕は彼女のことをもっと知りたくなり、森の奥へと足を進めた。
「ラララララ♪」
だんだん声が大きくなっていく。
いつの間にこんな奥まで来ていたのだろう。
引き返そうと振り向いた瞬間、声がした。
「こんにちは。お兄ちゃん。待ってたよ。」
『お兄ちゃん』? 意味がわからなくなり、声のする方を見た。
すると、会ったことはないはずなのに、懐かしい顔が。
全て、意味がわかった。妹だ。いないはず・・・だったのに。
双子の妹は、出産のときに、死んでしまったはずなのに。
歌が懐かしかったのは、母がよく歌っていたからだ。
僕達がお腹にいるときに、よく歌ってくれた歌だ。
零れそうになる涙をこらえて、僕は言った。
「ただいま。おまたせ。」
3/7/2025, 11:34:42 AM