精一杯の背伸びをする。
足の接地面積が一番小さくなるまで。
手を伸ばす。
少しでも上まで届くように。
声を漏らす。
限界まで伸ばした背に、もう少しだけ負荷をかけるように。
もう無理、と身体が言うまで、背伸びを続ける。
もう無理、と身体が言っても、仕事を終えるまで背伸びを続ける。
そうして、できる限りで綺麗にした黒板。
背伸びをやめると同時に、どっと疲れが押し寄せる。
そんな自分を見て、「かわいい」とはしゃぐ声もあり、「ぶりっ子」と陰口を言う声もあり。
好きでこうなってるわけじゃない。
飾っているわけでもない。
なのに勝手にやいやい言ってる周りが憎らしい。
まだ残ってるぞ、なんて小馬鹿にしながら軽々と一番上を消してみせる、背の高いアイツも憎らしい。
仕事返せ、と黒板消しを奪おうと格闘する。
アイツはすんなり自分に黒板消しを渡したと思ったら、自分を黒板の一番上に届くところまで抱き上げた。
クラス中が騒ぐ。
…あー、ホントに、憎らしい。
【届かない……】
5/8/2025, 12:20:45 PM