300字小説
会えない君に
星空に受信機のアンテナを向ける。宇宙には様々な方法でいろんな通信が飛び交っている。機密性の高いものから、ごく一般の誰に宛てたか解らないものまで。それを傍受するのが僕の趣味だ。
最近、聞いているのは古い通信だ。おそらく地球から数十光年離れた距離の、開拓惑星の誰かが、知らない誰かに届くことを望んで流した通信。そのユーモアを交えて語られる開拓生活は僕を魅了した。
今夜、僕は発信機のアンテナを空に向ける。通信の内容を調べて解った事実。かの星はガンマ線バーストを浴び、生存者はもう存在していない。途絶えた通信に今度は僕から返す。彼が好きだと話していた歌手の最新曲を、もういない彼に届くように星空に向けて流した。
お題「距離」
12/1/2023, 12:02:54 PM