ミツ

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「なんか玲奈(れな)って全然泣かなくてキモくない?」

なにそれ
聞いてしまった。
友達が言った私への悪口。

「分かる!なんか気持ち悪いよね、前もキモかったけど今の方が断然キモい」

前と言うのは私が泣かないようになる以前の話。
以前は泣き虫でその時もこんな風に言われていたから変えたのに。
目尻が熱くなった。

「てか、なんで急に変えたと思う?」

「んー、どうでもいいでしょ」

「それもそっか!」

二人の足音が近づいてくるのを感じて、足早に立ち去った。
泣けなかった。
いつものクセ。
学校での私は、元気で、泣かない。
それだけしかできなかった。
昔の私は、暗くて、泣き虫。
勉強も運動も得意じゃないからこれを「演じる」しかできなかった。
でも、「演じていた私」も否定されて、これからどうしたら良いんだろう。
ずっとヘラヘラ笑っていてそれも嫌われる原因の一つだと思う。
笑うのを辞めろと言われても、笑わないと泣き虫に戻ってしまう。
泣き虫でも良いじゃないかなんて、昔誰かに言われたけど言われた日に泣き虫が嫌になった。
きっかけは、休み時間のドッヂボール。
誰かが投げたボールが額に当たって泣いてしまった。
確かにその時、額からは血が出ていたというのに。
誰一人心配なんてしてくれなかった。
その時感じた空気は、今でも思い出すだけで気持ち悪くなる。
恐怖を覚えた。
泣いちゃ駄目なんだと、私に植え付けた。
家に帰るといつも言われる。
最近泣かなくなって偉いね、と。
昔褒められた記憶が曖昧で、褒められた時はとても嬉しかった。
だから、演じ続ける。
演じるたびに泣き虫な私は誰も求めていないのだと。
そう思い知らされる。
泣き虫なお前はこの世にいらないのだと。
気付いた時、胸が熱くなって涙が出てきた。
でも、声を出すわけにもいかなくて必死に抑えた。
泣き終わった後、少しだけ胸が軽くなった。
そんな生活を続けていると、親も褒めてくれなくなった。
当たり前になったから。
褒めてくれない=見てくれない。
そんな式が出来上がった。
見てくれないならいっその事死んでしまおうか。
そう思うようにもなってきた。
そしてまた、私は気付いた。
死んだらきっと皆が見てくれるのだ。
気づいたのは良いものの、死ぬ勇気がなかなか出ない。
どんな死に方にするか決めたら、勇気を出そう。


今日も明日も明後日も。
学校に行って、演じ続ける。
勿論家でも。
辛くなってもあともう少し。
その日まで私は「元気で泣かない良い子」を演じきる。


                        ー何気ないふりー

3/30/2024, 11:38:44 AM