謎い物語の語り手

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【雪を待つ】

昔々、雪の精霊と火の精霊が恋に落ちたそうだ。
彼らはもちろん、結ばれることなんてできなかった。

火は涙を流し、雪は溶け水になった。

彼らは幸せだったのか?それとも悲恋だったのか?

私には彼らが最期の時、どんなことを思っていたのか、或いは何を話していたのか皆目検討もつかない。

彼らは精霊だ。人間とは違う。

人間のような複雑な心なんて、「涙の理由」なんて、理解できなかったことだろう。

私も最近失恋をした。もう遠くへ行って会えない人に。
報われない恋心に共感はした。

でも、かの精霊たちはまだ幸せだろうと思ってしまった。水になって永遠に一つになれただろうから。

「生まれ変われるのかしら、精霊って」
別の精霊になるのかな。一つの水の精霊にでも?

ああ、全く下らないことを考えるわね。私ったら。
絵本を閉じて窓を見る。

二人の精霊に想いを馳せて窓を見る。彼らが世界を巡って、またここに舞い戻ってくることを祈りながら。

そして、私の悲しさを真っ白に塗りつぶしてくれるような、火のように温かい、寂しさより冷たい雪を待つ。

12/15/2024, 11:38:57 AM