いつもありがとう

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「あ、先輩。あけましておめでとうございます」
「おー、おめでとう。ところで疑問なんだが」
「明けて早々藪から棒すぎません?」
「今年の抱負はあるか?」
「そうですね、もっと様々な視点で物事が見られるようになりたいですね。先輩は今年の抱負はどうするんですか?」
「そうだな……僕は僕らしく過ごせればそれでいいな」
「先輩は自分大好きですしね」
「うるさい。じゃあ、去年の抱負は覚えてるか?」
「……うーん、覚えてないですね」
「だよな? 僕も覚えてない。どうせ忘れるのに抱負なんているのか?」
「はぁ」
「おい君、『この人また変ないちゃもん付けてるよ』って思っただろ!」
「べつに思ってませんよ、『今日も平和だなぁ』としか」
「僕を公園で遊ぶ子どもを見るような目で見るんじゃあない!」
「――逆に聞きますが、抱負を覚えている必要なんてあるんでしょうか?」
「目標なんだろ? 忘れたら意味ないだろ」
「まあ、目標としてはそうかもしれませんね」
「他にあるのか?」
「気付きませんか? 既に意味はあったんですよ」
「ヒントをくれ」
「ヒント早すぎません? ――先輩、今日はいい天気ですね」
「そうだな、元日から気分がいいな……ああ、もしかしてだが、“話題”か?」
「正解です。もし“抱負”という概念がなかったら、先輩とこうして話すこともなかったでしょうね」
「でも抱負なんて小中学校で発表させられた記憶しかないぞ」
「話す相手がいなければそうですね」
「どういう意味だ?」
「まあまあ。でも抱負にはもう一つ意味がありますよ」
「何だ?」
「抱負を考えられること自体が幸福ということです」
「急に胡散臭くなったな」
「大事なことですよ。抱負は言わば願掛けのようなものですからね。いいじゃあないですか、願掛け。タダでできる贅沢ですよ」
「君、そんなスピリチュアルなことを言う質だったか?」
「すみません、今考えました」
「だろうな。だがまあいい、そういう“抱負”だったしな」
「バレてしまいましたか」
「それに、否定するつもりもないしな」
「先輩らしいですね」
「まったく、何も出ないぞ」
「あ、そういえば言い忘れるところでした」
「……ああ」
「今年もよろしくお願いします」


~新年~

1/2/2025, 6:53:42 AM