名無しの夜

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 じゃあね、と手を降る君

 うんまたね、と見送る僕


 扉が閉まった電車の窓越しに
 互いにずっと手を振り合った

 互いの姿が、見えなくなるまで


 一人残られた駅のホームは夕陽が眩しい
 だから瞼を落として、風に耳を貸す


 約束があるから、
 寂しさを感じる必要なんかないのに

 やっぱり傍らが少し薄寒いような


 愛おしさがあるからだよ、なんて


 どこかで聞いたような言葉を心でなぞって

 君が向かった方角とは正反対の道を
 ゆっくりと歩き出す


 このフレーズを伝えたら
 君は、何と返してくるかな


 そんな想像で、寂しさを誤魔化した

12/20/2023, 7:35:05 AM