ガキの頃は無邪気にアンタを信じてた。
教えを守って真面目に生きてりゃ、親父も帰ってきて、明日の食べ物にも困るような日はいつか終わる、そう信じてた。
思春期と言われる歳になって、真面目に生きることの難しさと誘惑に負ける快楽を知った。
その頃はまだ、アンタへの贖罪の気持ちも少しは残ってた気がする。
そして、今。
親父は小さな骨になって帰ってきて、俺は明日どころか今日の食べ物にすら難儀するようになっていた。
女手一つで俺を育てていたお袋は、親父が死んだと聞かされてもアンタへの祈りをやめることはなかった。
ガリガリに痩せた手で俺の手を握っていたお袋は、親父が死んだ数ヶ月後に死んだ。
神様へ。
俺はもうアンタへ祈るのをやめる。
何にも応えてくれないアンタに、もう用は無い。
◆◆◆
「よう、兄弟。お祈りは済んだか?」
「お祈りなんてもう何年もやってねえよ。今まで神様が応えてくれたことあったか?」
「·····お前のそういうトコ、好きだぜ」
「おしゃべりはこれくらいにして、·····行くぞ」
神様へ。
俺はもうアンタを頼らない。
今はこの、手の中にある鈍色の塊が俺の唯一信じるモノだ。
END
「神様へ」
4/14/2026, 3:35:16 PM