「期待を背負って、決意を背負って」
ボールを追いかける彼を、私がどんな気持ちで見つめているか、彼はきっと知らないだろう。
この辺りでは有名な必勝祈願のお守りを両手で包み込む。
どうか、どうか、あと、一点!
最後の大会を勝利で締めたい、と彼は言っていた。
もしも私に不思議な力があっても、彼は奇跡を望まないだろう。
そんなことわかっているし、私に不思議な力なんて無いけど、祈ってしまうのは仕方がない。
ボールを受け止めた彼が、ゴールに向かって走り出す。
立ち上がりそうになるのを堪える。
昨日、彼とした会話を思い出す。
「優勝したら、話を聞いてほしいんだ」
「それって優勝しないとできない話なの?」
「そうじゃないけど……そうでもしないと言えないっていうか」
期待させる台詞を吐いた彼を恨んでる。
変なフラグ立てないでよ。
話なんて、いつでも、いくらでも、聞くのに。
彼の姿を一瞬でも見逃さないように、唇を噛み締めた。
────力を込めて
10/8/2024, 2:21:15 AM