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夜中の公演を君と手を繋いで歩いている。君は酔ってるからあっちにふらふら、こっちにふらふら。
時折手を離して駆け出したと思えば、また戻ってきて俺の手を握る。
まるで俺たちの今までみたいだなと、そんな詩的なことを考えた自分がバカらしく、俺はひとり苦笑する。

「あ」

君はまた俺の手を離して駆け出した。暗闇に浮かんでいるのは、子供の遊戯。ジャングルジム。
身軽な君はひょいひょいと登って、俺に手を伸ばす。

「ねぇ!」
「えぇ?俺にものぼれってか。やだよ、危ねぇよ。酔ってるし」
「大丈夫だよ!俺がついてる」

そう言って君は、その大きな瞳をさらに広げて、晴れやかに笑う。
ふっ、と俺は苦笑する。まるで今までの俺たちの関係みたいだね。
これは詩的ではなく、単なる事実。
俺にはいつも君がついていて、もちろん逆もまた然り。

子供の頃、果てなく遠く思えたジャングルジムのてっぺんはほんの数メールの高さしかなくて、俺は酔ってご陽気な君の隣に腰掛け、考えることを放棄してただ君と夜空を見上げた。



▼ジャングルジム


9/23/2023, 3:41:36 PM