「波音に耳を澄ませて」
海沿いの古民家に民宿を営んでいた俺のじいちゃんが、先月他界した。
最後まで元気に民宿をやっていた、そんなじいちゃんが遺言として、この民宿を俺に続けて欲しいと遺した。
じいちゃんが亡くなってしばらくお休みになっている民宿に着いた。周辺の庭や民家の中は綺麗に保たれていたが、民宿を再開させるためにあと1ヶ月くらい休むことにした。
山沿いの方に住んでいた俺にとって海沿いにあるこの古民家は環境が違くて新鮮だった。
朝から晩まで波音が聴こえる。
朝は太陽の光と穏やかな波音で目が覚めて夜は草木のざわめきと子守唄のような波音で眠る。
ずっとこうしてゆっくりしていたいと思いつつ、民宿の再開へ向けて毎日準備を進める。
「じいちゃん、俺にこの民宿を託してくれてありがとう、沢山の出会いを楽しみにこれから頑張るよ。見守っててな。」
海に向けて呟き、瞳を閉じて波音に耳を澄ませた。
7/5/2025, 11:25:42 AM