白糸馨月

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お題『明日、もし晴れたら』

 明日、もし晴れたら遠くに出かけよう。
 そんなの、百年くらい昔の話だ。俺のひいおじいちゃんとか、ひいおばあちゃんの時代は外へ出ていろいろなところへ出かけたらしい。
 俺達の時代は違う。今の二一〇〇年代の日本の夏に空が晴れたら死を意味する。日本に四季があったなんて、昔の話だ。今や日本はとんでもなく暑い常夏の国として知られてて、外へ出かけられるのは昔の日本で言うところの冬の時期だけだ。それでも気温は二〇度を超える。夏に外へ出る時はキンキンに冷えた防護服を着て太陽の光から身を守らないといけない。昔はあったらしい草木も今は太陽光で枯れてしまっている。水があってもすぐ蒸発してしまうからだ。
 だけど、百年以上前は海とか行けたんだろ。外で花火を見られたり、新宿とか渋谷で買い物したり。
 今となっては、海で水着を着たら全身火傷して死ぬし、花火は動画サイトかプロジェクションマッピングで見るものだし、新宿や渋谷のビルは皆地下に移動した。
 外に出られなくなった俺の楽しみは、VRの世界に行くこと。これなら天気に左右されずに家にいながらいろいろなところへ出かけられるからな。

8/2/2024, 4:07:43 AM