no name

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「嗚呼、その子。高い高いが好きなの。」
「高い高い…?」
親戚の間に生まれた子が二回目の誕生日を迎えると聞いて、前々から準備していた贈り物を抱え、訪れた。その時、中々会えないからと小さくて柔らかい命を抱かせてもらうことにした時。突如そう言われた。

「もう首が座ってから大分経つし。落とさなければ大丈夫よ。」
「はぁ…。」
少し不安だが、どうも断れない空気だ。しょうがないので、赤ん坊の脇に手を通し、空へふわりと投げ出す。

そうして瞬く間にまた手の中に戻ってきた。それはからからと笑っているが、こっちは気が気でなくて思わず存在を確かめるように抱きしめる。

我が子ではないが。からからと笑う君が天の使いのように見えて。空高く放り投げたらそのまま高く高く昇っていってしまいそうで怖かった。

10/15/2022, 5:55:24 AM