G14

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 私の彼氏はイケメンでお金持ちだ。
 頭もよく、誰もが知る名門大学に通っている。
 すでにいろいろな企業からオファーが来ており、将来を約束されたエリートなのだ。

 そんな彼だが、多少は驕った所があるものの、いつも優しく紳士的で、記念日も忘れたことがない。
 まさに完璧超人と言った風で、自分にはもったいないほどの人物だ。

 そんな彼だが一つだけ欠点、というほどの事じゃいけど、妙なことを言うのだ。
 『自分はタイムマシーンを持っている』と。

 いくら何でもありえないと思う一方で、彼が嘘をつくとも思えない。
 実物を見せてくれれば早いのだが、そんなものを簡単に見せてくれるのだろうか?

 長い間悩みぬいた末に、ダメ元で聞いてみると、すんなりOKしてもらえた。
 彼が言うには、『あれから話題にも出さないから信じてないのかと思った』。
 私が悩んでいたのは何だったのか……。

 そして本日タイムマシーンを見せてもらうために、彼の家を訪れた。
 彼の案内で綺麗に整頓された倉庫に入ると、奥に白いシートがかけてあるものが見える。
 初めて見た時の感想は、『薄い』である。
 バックトゥザフューチャーに出てくるデロリアンようなものを想像していたから、というのもあるけどこんなので時間旅行なんて出来るのか?
 もしかしてコンパクトに畳めるタイプ?

 彼に見てもいいかと聞くと、頷いてシートをはぎ取ってくれた。
 そこにあったのは、畳ぐらいの大きさの板に色々な箱がついている、なんだかよく分からないものだった。
「えっと、これがタイムマシーン?」
「そうだよ」
「そっか」

 私は少しがっかりした。
 確かに勝手に期待したのは私だが、これは無いんじゃないのか。
 だって、どう頑張っても子供のおもちゃの様にしか見えない。

「どう?」
 彼が笑顔で聞いてくる。
 私は返答に困る。
 だって、これは、なんと言うか――
「ドラえもんに出てくるタイムマシーン見たいだろ」
「ええ、言っちゃうの!?」
 まさか彼に言われるとは。

「僕でもそう思うんだから仕方がない」
 彼はイタズラが成功したかのように笑っていた。
 もしかしてからかわれた?

「ああ、ゴメンゴメン。君の反応が面白くて、つい。
 大丈夫だよ、これは本物のタイムマシーン――

 だと思っている」
「思っている?」
 不思議な表現だった。
 彼は私の心を見透かしたように、説明を続ける。

「これさ、小学生くらいの時かな、その時にもらったんだ。
 壊れたからって。
 うち廃品回収業者じゃないのにさ」
「そうなんだ……」
 彼にと取って思い出の品ということか。
 友達が作ってくれて、今でもそういうことにしてるって意味かな。
 小さいころの思い出は大切だもんね。

「これね、その友達を訪ねて未来から来た奴が乗ってたんだ」
 んん?変な話になって来たぞ。

「ていうか、それドラえもんじゃん」
「やっぱそう思う?」
「思う」
 やっぱりからかわれたか。

「子供の頃のこと、よく覚えていないんだ」
 まだ話は終わってないらしい。
「そのおぼろげな記憶の中に、これに乗っていろんな時代に行った記憶があるんだ」
「それは……」
「うん、言いたいことは分かる。
 アニメと記憶がごっちゃになっているんじゃないか、とね」
 そう言いながら、懐かしい目をしてタイムマシーン(?)を見ている。

「僕も実はそうじゃないのかと思ってる。
 これをくれた友達も、その時のこと覚えていないみたいで、実際よく分からないんだ。
 これを持っていた理由も覚えてない」
 彼は振り向いて私を見る。

「でもさ僕はこれを本物だと思ってる」
「友達がくれたから?」
「いいや、ロマンさ」
 彼は子供っぽく笑う。

「そんな顔初めて見た」
「カッコいいだろ」
「ん-ん、子供っぽくてかわいい」
「締らないなあ」
 そして彼は愛おしげにタイムマシーンを撫でる。

「今の僕じゃ無理だけど、これ修理したいんだ」
「その時は乗せてくれる?」
「いいよ」
 おお、言ってみるもんだな。
 将来が楽しみだ。

「将来子供も出来たら乗せてくる?」
 口が滑る。
 さすがに結婚を飛び越して、子どもの話はない。
 だが彼は、気にせず笑って答えてくれた。

「それじゃこれを大きくして、たくさん乗れるようにしないとね。
 3人しか乗れないんじゃ話にならない」

1/23/2024, 9:58:50 AM