Morita

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「酔っ払ってブランコ漕いでるとさ、自分が揺らしているのか、世界に揺られているのか分からなくなるよね」と言っていた君はもういない。

児童公園のブランコ、二つ並んだブランコ。行きつけの居酒屋で飲んだ後、いつもそこで女二人でN次会をしていて。

そうして二人で並んで座っていると、まるで子供の頃から親友だったみたいだなって思った。たぶん笑われるから話してないけど。

君と一緒にブランコを漕ぐことで私の世界は回っていたのだ。

でも本当は、私たちは幼馴染ではないし、そもそも君にとって私とこうしてN次会をするのは恋愛でもなんでもなかったのかもしれない。ただ仲が良くて、なんでも話せる同僚ってだけで。

私は一人でブランコに座る。
君はいない。きっと忙しいのだ、結婚式の準備で。今まで何にも話してくれなかったのに。

地面を蹴って漕ぎ出す。夜空を揺らす、頭を揺らす。

冷たい風が、耳と首筋をひゅうひゅう流れる。
もっともっと。意地になって強く漕ぐ。

なんで何も話してくれなかったのとか、私のことなんとも思っていなかったのとか、そういうモヤモヤを、きんと冷えた風ですすぐ。なんにも考えないように、ただひたすらに漕ぐ。

わーって叫んでやりたくなった。でもやらなかった。大人だから。ご近所迷惑になっちゃうから。

ずっとずっと前から、大人になる前から、君と仲良くなりたかったなあ。

【お題:ブランコ】

2/2/2024, 9:27:06 AM