宵に浮かぶは、白い月。
「んじゃね」
友達と別れて、家への帰り道。今日もみんな賑やかだったねぇ。
「楽しかったねぇ」
誰にともなく独り言を呟いて、私は自転車を押して歩く。遠く聞こえる踏み切りの音に、どこからか漂ってくる美味しそうな匂い。あ、今日はこの家カレーなのか。誰の家か知らないけども。
誰もいない帰り道。ふと、私は空を見上げる。そっか、今日は満月なのか。
「……」
振り返ると、月に照らされた私の影が伸びる。それはきっと、私の心の奥の想い。
今、この月に願いを祈るのならば。
この嘘が、誰にも知られませんように。
5/26/2023, 10:29:42 AM