終わりにしよう
手を取り合った僕らを止めるものはなにもない
十分に生きづらさを感じて
十分に人生を歩んできた
そんなつもりでいた
「意外ときれいじゃん」
気の抜けたような声で君は目の前に広がる景色を眺めていた
緑に囲まれた海は、有名な観光所にもなっている
僕の手を握る君の手に力がこもる
その手がすり抜けていかないように僕も力を込めた
「満足した?」
「うん、十分すぎるほどね」
僕らは生きることが不得意で
この世界はそんな僕らをどこまでも追い詰めてきた
明日のことを考えることはできなくて
全てに嫌気が差していて
ただそんな世界でも君がいることでもがく理由になりえた
「生きるよ。今を。」
死にたがりの僕に君はそう言った
きっと今の僕の表情はとても酷いものだろう
お互いに生きることに疲弊しているというのに
君は僕を生かそうとして
自分も生きようとしている
死ぬために来たつもりの僕と
今を生き永らえるために来た君
君も涙を流していた
この世界は酷く美しく酷く残酷だ
強者が生き残り弱者はどこまでも隅にいる
きっと僕らは隅にいる人間なのだろう
けれど君がいれば隅っこであろうが崖っぷちであろうが
そこが僕の世界の中心になる
死にたがるのは終わりにしよう
僕らは今を生きていかなければならない
どれだけ生きにくい世界でも
生きるのが不得意であっても
まだ隣には君がいて
僕らはここに立っている
7/15/2024, 3:43:31 PM