川柳えむ

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 高い熱に魘される。
 遠い意識の向こうから、カラフルな球体がいっぱい、飛び跳ねながら近付いてきた。
 それは、大きくなったり小さくなったり、きのこになったりたけのこになったりした。そして戦争を始めた。
 戦火から逃げ延びて、辿り着いたのは大きなお城。生垣の白いバラを色とりどりのペンキで塗る、体がペラペラな兵士。敷地内の一際高い木の上から、ピンクと紫の縞猫がニタニタとこちらを見下ろして笑っている。
 あぁこれ知ってる。あれだよね。時計持ったウサギとか出てくるあの物語。
 王女に首を斬られたくないので、なぜか持っていたガラスの靴をその辺に置いて、そっと城を後にした。
 最寄りの湖を覗き込むと、水底にこれまた綺麗なお城が見えた。いろんな魚や亀が泳いでいる。
 濡れたくはないので湖は無視して、次に辿り着いたのは小さな小屋。小屋に入ると、小さな食器に乗せられた料理がたくさん並んでいた。
 特に食べる気にもならなくて、小さな椅子に座ってぼーっとしていた。顔を上げると、窓の向こうにワンピースを着たとても背の高い女性? が「ぽぽぽ」と言いながら通り過ぎていった。
 怖くなって隣の部屋のベッドに入り布団を被った。すると、そのベッドが持ち上げられ、何か箱のような物の中に閉じ込められてしまった。
 慌てて飛び上がり、内側から箱を叩くと、上部がぱかっと開き、光に包まれた。
 光の中から、いかにも王子様な姿をした男の人が「踊りませんか?」と、置いてきたガラスの靴を差し出して尋ねてきた。
 身を任せてくるくると踊ると、自分の体から黒い粒のようなものが「わー」とちっちゃく声を上げて、たくさん飛び出て弾けて消えていった。そしてくるくるくるくると回り続けて、目が回って……。
 目が覚めると、熱はすっかり下がっていた。


『踊りませんか?』

10/4/2023, 10:36:13 PM