『春風とともに』
その人は突然現れた。
街を支配しようとする悪い王様に頭を抱えていた僕たち。
抵抗しようにも何十、何百もの兵士を持つ王様に
一般人の僕たちはどうしようもなかった。
そんなとき、1人の旅人がやってきた。
できる限りのおもてなしをした。
僕が数ヶ月我慢してやっと食べれる
乾いたパンを旅人にあげる。
旅人はそのパンをちぎり半分僕に譲ってくれた。
「お気に召しませんでしたか?」
「いや、ご飯はみんなで食べる方が美味しいからね。
このパンの半分を君と分け合う方が嬉しいよ。」
おもてなしをするはずの相手に優しくされて
思わず泣きそうになる。
そんな様子を見てか村人はパンをかじり
僕の家を出ようとする。
「それじゃあ王様をやっつけてくるよ。」
「えっ、旅人なのにどうしてそこまで...」
「君がお腹いっぱい食べて喜ぶ顔が見たいから。」
旅人は行ってきますと笑顔で僕の家を出ていった。
これは春風とともに現れ、僕たちを助けてくれた旅人のお話。
語り部シルヴァ
3/30/2025, 10:14:21 AM