期待されると応えられない自責の念ばかりが自分の中で膨れ上がって、身体が破裂する。
期待されないことは誰も自分のことを見ていないということだから悲しいけれど、その分楽でもある。
舞台袖の暗がりで、明るい舞台の上で繰り広げられる輝かしい劇を、私は全身を闇に埋めてながめている。
苛烈できらびやかな舞台の下に飛び出していけたら、と思う。
皆の不可視の憧れを、期待をかなえられる存在だったなら、と思う。しかし、私には苛烈な光に耐えられるだけの厚い皮膚と光を反射する強い心がない。
私は、弱い人間だ。そのことを毎夜考えて、毎夜泣く。
強い人間になるだけの努力もしないのに。涙は、かすかに甘い味がする。堕落を許す味だ。きっと私は人間の中でも地獄に近い方の人間だ。
天使になれたならよかった。
人間離れした微笑みで人間の友達を失って途方に暮れることがあったとしても、どこまでも純粋なままで、醜いところを見てもそっと指先で醜い場所を慰めるように撫でることのできるような慈悲を持っていて。透明な翼が欲しかった。窓から透明な翼をはばたかせて飛んでいってしまいたかった。
でも私はどこまでいっても卑しい、人間だ。天使に近い者もいる人間の中でもより卑しく、矮小な人間。
綺麗な心を持ちたい。心根がうつくしい人間でありたい。
そう思っていても、思っているだけでは、何も変わらない。
毎日失敗して、失言して、失望させて、1歩ずつ地獄に近づいていく。
私は、地獄になど行きたくない。私の話を聞いてくれる人は、地獄にいない。地獄が地獄である所以は、きっとそれだ。
こんな矮小な人間でも、一端の人間として対等に話をしたい、聞いてほしいと思って、ああ、もう10年経ってしまった。
あと100年経ってもこのままだろうか。100年後私はここにいない。
(100年後いるのが地獄か天国かわからなくても息をする夜)
9/11/2024, 1:36:42 PM