ずっとこのまま
恋だと思っていたものが終わった
それは、私が想像していたものよりもずっと静かで、ずっと穏やかな終わり方だった
恐らく彼はまだ、そのことにはっきりとは気付いていないだろう
もちろん、私からの連絡頻度や言葉の温度が今までと違うところまではわかっていると思う
不器用だけれど、人並み以上に勘は鋭い人なのだ
しかし、その上で自分からは確かめにこない
権威、立場、役割
私にとってはどれもクソ喰らえと思うようなものばかり
そんなものたちに彼は雁字搦めにされている
しかし、それが彼が生きる世界の現実であると同時に、彼にとっての安心安全でもあるのだ
それはそれ、これはこれ、好きなものは好き
そんな風に縛られず自由に生きる私とは、そもそも根っこの部分からして違う
どちらが良い悪いの話ではない
ただただ構造として噛み合わない二人なのだ
恋だと思っていたもの、と敢えて私が書いたのは、あくまでも私にとっては恋だった、ということ
彼だって、よしんば少なめに見積もって二度三度私に心躍らせたことくらいあったろう
不用意に見つめ合い言葉を失ったときのあのちょっと間抜けな顔も、不意に私の手を包んだときのあの温もりも
私のこの目とこの手がしっかりと覚えている
しかし、彼自身がそれを恋だと認めなければ、この思いは永遠に未分類の感情のまま先には進めない
私たちの関係はどこまで行っても宙ぶらりんなのだ
今年はありがとう
来年もよろしくな!
なんて、業務に紛らせ安心安全なメッセージで年末を締めくくった彼
私がそれに返信しなかったのは、彼が思うその安心安全を、無邪気という名の境界線侵入で壊したくなかったからだ
ずっとこのまま
君とはこの距離と温度がいい
言葉にはせずともひしひしと伝わってくる彼のその思いを、私はまた一つ静かに呑み込んだ
こうやって、彼の未整理な感情を私はいつまで肩代わりすればいいのだろう
軽やかな女を演じ続けたのは、この深い想いがあなたを湖の底へと引きずり込んでしまわないため
向き合う術を持たない彼をこれ以上追い詰めないためだ
恋を壊さずにそっと元の二人に戻る方法
徐々に温度を下げ、感情を安定させ、彼が安心して受け取れる言い回しに変換の上、失礼のないように、かつ冷た過ぎない言葉を探し続けた四ヶ月
私はついに、このとんでもなく難解なプロジェクトをやり遂げたのだ
彼はこれからも、今まで通り涼しい顔をして私に接してくるだろう
何だか最近楽だなぁ…そんなことを思いながら
私は私で彼を見てそっと微笑む
もちろん何事もなかった顔で…
それでいいのだ
もうどのみち先へは進めない
その決定事項が時折私の胸をチクリと刺したとしても
私はそういう彼を好きになり、気付けば恋をしてしまっていたのだから
お題
ずっとこのまま
1/12/2026, 1:29:57 PM