俺は今、ジャングルジムで月へ向かっている。
宇宙エレベーターが完成され、今度はアクティビティとして「宇宙ジャングルジム」が建設された。
そして、様々な冒険家が宇宙ジャングルジムに挑むようになった。俺もその1人だ。
だが、まだ月から帰還した者はいない。
山とは違って、景色が変わらない空間をひたすら登る道中は不思議なものだった。
いくら休んでも月にはなかなかたどり着けない。
しかし見上げれば、そこには月が佇んでいるのだ。
俺が月を見つめれば、月は俺を穏やかな眼差しで見守っているような気がした。
これを愛着というのだろうか。
そうして月を見続けていたら、いつの間にか手を伸ばせる距離まで辿り着いた。
俺は、愛しい月に触れてみた。
ちょっと凸凹で触り心地がいいとは言えない。それすらも可愛らしかった。
もっと君を知りたい。
気づけば、月面を駆け出していた。
「また、宇宙ジャングルジムに登った人が行方不明だって」
「これで何人目なんだか」
「みんな月には辿り着けているらしいんだけどなー」
「さぞ月の居心地でも良いのかね」
9/23/2023, 1:34:15 PM