つとつとと、ガラスを打つ雨の色。濡れた曇天がしずくになって、この目が捉える先からこぼれ落ちていく。
出会って、気づいて、別れの言葉もいいそびれ。人混みにかき消える気配のように、アスファルトの上、形をなくしてどこかへ流れていく透明なひと粒たち。
どれが彼で、いずれが君か。あいつはどこかへ、あなたは彼方。たった私はぽっちで一人。ないまぜの気持ちのままに窓を見る。
薔薇の葉が深く緑に泣きながら、花弁が雨をすすって空を請うている。紫陽花にすればよかったと、カタツムリの殻からため息がこぼれていた。
陰る彩りに陽光恋しく、瞬きの裏に刺す鮮烈なあの日の君を、面影を。目に目を見返す、映り込んだ私の影のその外へと、いまだ夢に見る。
【窓越しに見えるのは】
7/1/2023, 1:10:53 PM