放課後。
課題を出しに職員室に向かった友達を待ちながら、
廊下の掲示スペースに張り出された先月の川柳大会の作品を見ていた。
うちの学校では、テーマに沿った川柳を作る大会が月イチで開催されているのだ。
初代校長の趣味が川柳だったとかなんとかで(よく覚えてない)開校以来続いているらしい。
大会といっても賞や景品が出るわけではないのだが、意外と参加者は多い。
文系の教育に力を入れている学校なので、意識の高い生徒が多いのだろう。
ちなみに私は読む専の文系女である。
それにしても、今月も3人に1人は好きな人が死んでいる。誰が決めているのか、最近はなんだかポエミーなテーマばかりなせいだろう。
先月は世界が終わるとしたらとかなんちゃらで、今月は初恋。
毎月毎月、なんだか湿った作品が多い。ちょっと食傷気味だな、なんて読み専のくせに好き勝手な感想を抱きながら目線を動かしていく。
いつまでも 忘れられない 五十音
(……?)
なんとなく足を止めた。
なんだか気になって作品の解説欄を見たが、空白だった。
誰の作品だろう。ワンチャン知り合いだったら色々聞けるかな、と続いて名前欄に目をやると、見覚えのある名前だった。
確か、去年同じ学年に転校してきた女の子。
顔を全然覚えて無いし話したこともない。マジで他人だ。良くも悪くもなんか暗いし影が薄い印象だったのは覚えてる。
一応同学年という繋がりはあったけど、コンタクトは無理そうだ。
でもやっぱりなんか、作品が気になる。
……話しかけるの、アリかなあ。
入学してから2年半、今の友達関係にはそれはもう満足してるし、毎日楽しく過ごしている。
今更新しく友達を作りたい、なんて気は全然なかった。むしろ受験控えてるのに今から友情育んでどうすんだよ、って感じだし。
でも、ちょっとだけ。本当にちょっとだけだけど、彼女と話をしてみたい、なんて柄にもないことを思った。
とりあえず、数年ぶりに初対面の人への話しかけ方を復習しよう。
5/10/2023, 3:27:10 AM