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鏡よ鏡よ、この世で最も醜いのはだぁれ。
顔から少しずつ身体を、水面を破り沈めていく。
可愛らしい制服はこの顔にはあまりにも合わなくて。
浴びてきた視線はこの顔で生きるにはあまりにも痛くて。
陽光を照り返す生温かい水面がどこよりも心地よく、
そして底の見えない黒い潮はどこよりも冷たく傷を癒やすように冷やしていった。
制服はあっという間に水を吸い込み、底へと引きずり込むように身体に重く掴みかかる。
生きることを思い出そうとする身体の中へと容赦なく入り込む海水は肺も胃も眼球も味わうように浸食していく。
一抹の後悔をこれでよかったのだという冷めた熱が飲み込んだ。__はじめから、こんな姿で生まれたときから手遅れだったのだ。
太陽の美すら自分とともに青く暗い底へと沈める海へともう一度問う。
鏡よ鏡よ、この世で最も醜いのはだぁれ。
そして、そんなものすら受け入れてくれるのはだぁれ。

8/23/2023, 10:37:51 AM