泡沫

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昔、嫌な事があった。
行動を否定され、言葉を否定され、笑顔を否定され、身体を否定され、考えを否定された。
オマケに趣味も好きな事も認めてはもらえなかった。
そのせいか、はたまた元々の性格か。人に対して、簡単に心を開かなくなった。とはいえ、ぶっきらぼうにしている訳じゃない。人と話すし、冗談も言うし、ツッコミも入れる。ちゃんと話して、ちゃんと笑う。でもどこかで、不安になっている。人と関係を保つことに。こいつらといることに。
長い関係も、短くも沢山遊んだ関係も、趣味が合おうとも、関係なんて意外と簡単に壊れる。
付き合いが長ければ長いほど、悪い所が見えてくるのだ。
それは自分のも。相手に嫌なところが伝わっていく。
どう思われているのか怖くて、不安で、自分の嫌なところはどうか気になって、本音なんて晒せない。
でも話さなければ分からないと分かっている。勇気もないのに、矛盾ばかりを抱え、頭を勝手に悩ませる。
だからさ、あまり人と関わるのを控えているんだ
ありったけの勇気で君に伝える。
弱ったところを見られて、もうどうでも良くなったのか、案外本音はポツリと、そしてドバドバと溢れた。
溜め込んでいた。誰にもいえずに、ただただ呑み込んで、消化なんて出来なかった。
君は悩んでくれて、真剣に聞いてくれて、ふわりと笑った。
そして、言葉を紡ぐ。

肯定をしてくれた。それでいいと言ってくれた。その優しい目で、柔らかな口調で、微笑んで。
ああ。それが欲しかったのだ、と。
味方が欲しかった訳じゃない。共感が欲しかった訳じゃない。ただ、自分を知る誰かに本音を言って、肯定して欲しかった。
でもそんな関係は簡単に作れないし、そんなもの今まで無かった。
ポツリと水が垂れる。頬を伝って、膝へ落ちる。
止まらなかった。流れに身を任すように泣いた。欲しかった言葉に、ただただ。
ありがとう
君のおかげで、少し胸が張れそうだ。
今日のこの夜は、絶対に忘れられない時間だ。特別な夜だ。
こんなことを思うなんて、本当に浮かれてるらしかった。



ふわ、と淡い光がうまれ、消えた。
悩んでいるあなたに寄り添うのが、少し遅かった。
一緒に、いてあげられなかった。
空の星に混じる光を見届けて、腰をあげる。
あなたの笑顔、好きだよ。
最後にみせたその笑顔を、きっと忘れることなんてない。
あなたの誕生花をそこに置いて、踵を返す。
少し不思議なことがあった、特別な夜を後にして。

1/21/2022, 4:12:50 PM