藍間

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「また朝焼けが見たいねぇ」
 それはばあちゃんが毎朝口にする言葉だった。
 窓から空を見上げてはそうぼやくばあちゃんの言う朝焼けを、俺は本でしか見たことがない。
 システムによってコントロールされたドーム内は、いつだって規則正しく天気が移り変わる。だけどその中から朝焼けと夕焼けはこぼれ落ちてしまった。
 きっと無意味だからだろう。豊穣の雨や光とは違って、それらは植物の育成にだって役に立たない。限られた能力を無駄なものに費やす余裕なんて、俺たちの世界にはなかった。
「うん、そうだね」
 でもベット横に立つ俺には、頷くしかなかった。もうすぐ世界から見放されてしまうばあちゃんに、そんな現実を突きつけても仕方がない。仕方がないんだ。
「俺も見てみたいよ」
 そう答えればばあちゃんは満足そうに微笑んで眠りにつく。それを見届けた俺は規則正しい生活を送るべく、あの青空の下を目指して扉へと向かうのだ。

4/13/2023, 10:32:39 AM