hot eyes

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「葉瀬(ようせ)」
「ん、何?」
「俺はその玲人(れいと)さんって人知らないけどさ、葉瀬のこと結構好きだと思う」
「...ん?何急に」

「告白、諦めてんだろ」

雪(ゆき)のその一言でテーブルの空気がスッと止まる。周りの話し声がやけにうるさくて、自分が一人世界に取り残されたようだった。

葉瀬は口をつけかけていたビールジョッキを机の上にゴトン、と置いて目を逸らす。
「...だって、玲人のタイプは私じゃないんだよ」
「タイプとか関係無いし。俺が海斗(かいと)に告白の返事する時とおんなじこと言ってやろうか」
「いや聞きたくない」
「『好きなんでしょ?なら好きって言っちゃえばいいじゃん!』『絶対大丈夫!言え早よ!付き合え!』」
「あぁ~~聞きたくない~~~」
葉瀬は耳を塞いで机に突っ伏した。

「雪の鬼ぃ...悪魔ぁ...人でなしぃ...」
「なんとでも言えよ」
「.........だって雪と海斗は、もう海斗が雪に告白してその返事だったじゃん...」
うぅ...とお酒のせいで涙腺が緩んだせいか目に涙が浮かんでくる。
「じゃあ俺が二人のこと両想いかどうか見ようか」
「......いやそれは駄目。玲人は雪のタイプまんまじゃん。年上で危ない...危ないのかな...?とにかく駄目」
「俺、一応彼氏いるんだけど?」
「それでも来るものがあったらヤダァ!」
イヤァァ、と今度は頭を抱える。

「......もしフラれたら、私諦めきれないよ。ズルズル引きずりたくない...だからやだ」
「............葉瀬、いざとなれば手放す勇気も必要だぞ」
「それが無いから告白したくないのぉー」
「大丈夫だ。もし引きずるようならさ、もう一回告白すればいいだけだ」
「......またフラれたら?」
「その時はその時だ。とりあえず当たって砕けろ」

葉瀬はその言葉を聞いてまた唸る。

いつか彼女が、手放してしまう恐怖よりも誰にも取られたくない独占欲が勝った時、やっと気持ちを言えるのだろうと雪は気づいた。


お題 「手放す勇気」
出演 葉瀬 雪 玲人(名前のみ) 海斗(名前のみ)

5/17/2025, 1:55:05 AM