失われた響き
幼い頃から続けていたピアノ。
なんとなく、一生続くんだろうなって根拠の無い想いがあった。
でも、ある日突然、私の両手は動かなくなった。
若年性パーキンソン病だと告げられた。
ピアノを弾きたい気持ちだけが毎日毎日大きくなって、鍵盤に手を置くと筋肉が強ばって震えで手が動かない。
ピアノの前に座るだけで今では涙が止まらなくて、「動け、動け、動け。」と自分で自分の手を叩いたこともあった。
自分の手で美しい音色を奏でられることが好きで、生きがいだったのに、
病によって失われた響きはどこにも誰にも届くことはなくなって、ただ私の心の中に黒い塊となってこだまするだけだった。
11/29/2025, 10:45:09 AM