風が吹き始めた。それは時が動き始めた合図だった。
大地の谷間を縫うように、風はあたりの粉塵を運んだ。偶然に芽生えた種子が、その風に乗る。種子は大地の開けたところにたどり着いた後、小さな植物が芽吹く。荒れ果てた土地が再生されていく。
人々は再び生まれ、生活が始まる。はるか西にいた人々は、風の力を頼りに東へと進み始めた。
風は時を動かす合図だ。
針は道標。最後に行き着く先を指している。
風の力で動く車はひたすらに東へと進み始めた。日が昇る方向、それを指し示すのは、ハンドルの中央に付けられた針だ。
それが向く先に進むんだ……
ばあさまに言われたから、こうして彼はハンドルを握り何の当てもないまま、砂漠の道を進む。前に行く人々がどうなっているかはわからない。これは使命だから不安も何もない。
西から東へ進むその過程こそが時間だと気づくのはいつのことだろう。そして、針が時の流れをも表すことになるとは、誰も思わないだろう。
2/7/2024, 3:59:58 AM