ひとひらという言葉を知らなかった。
何か小洒落た一文に使われている言葉という認識だった。
「薄く、ちらなもののうちの一つ」。
あまりにも質素な意味を知った時、目に浮かんだのはポストから落ちた請求書の一枚、溢したシュレッダーの紙、人波の中立ち塞がる恋人たち。ひとひらはありふれた日々の事柄だと思った。さも風情ある日本語のようにあつかわれる「ひとひら」には何の趣もなかった。それでも、些末なひとひらの上に記憶と記録を重ねて意味を増やしていくことができたなら、それは素敵なことだろうと思った。
4/14/2025, 7:17:26 AM