エレベーターに乗ったら、あの子の香りがした。金木犀のような、懐かしくて甘い香りだ。このエレベーターは8階から来た。僕は8階のボタンを押した。扉が開いてすぐ飛び出す。前へよろめきながら右左右を確認するけれど、当然、人の姿はない。僕のせいで、心通わせられなかったあの子。もう一度チャンスを、なんて思ってない。ただただ謝りたいのに、痕跡を見つけたって、きみに辿り着けない。
10/19/2024, 9:26:37 PM