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【君の目を見つめると】


高校最後の夏
一足先に部活を引退した僕は
昨日までの自分の日常を思い返すと
これから始まる退屈な日常に、早くも嫌気がさしていた

そういえば、来月から塾を一つ増やすと
教育熱心な母親が息を巻いている
担任も、僕の将来を心配してか、
より偏差値の高い大学を目指させようと必死だ。

これから待ち受けるであろう未来も、大人の言う苦労も
僕にはまだ分からないけど
当の本人を差し置いて勝手に前に進む毎日に、
苛立ちを感じつつも、
人が決めたレールに身を任せようとする自分に嫌気がする

自分の事なのに、まるで人事の様に思えてしまう。

高校卒業と同時に
誰かが僕の中に入ってきて
人生をバトンタッチするのもありかな、なんて馬鹿げた事を
考えていたら
突然、雨が降り出した。

この息苦しい教室を少しでも楽にしようと
自分の席から近い
1番後ろの窓を少し開けた。
隙間から入り込む雨の匂いと力強い風が心地よくて
余裕ができたのか
ふと、窓ガラスに映る自分の姿を見つめる

ちょっとやつれた顔に
汗と湿気でうねった前髪、
日に焼けた肌も、
整えられた制服姿も
自分なはずなのに
何だか知らない人を見ているようで

窓ガラスに映る君は何だか苦しそうだった。

君の目を見つめると
どうしても言葉にならなかったはずの
思いが溢れてきて
涙がこぼれ落ちてきた。

4/6/2024, 5:08:48 PM