「飛べない翼」
僕は翼に夢を見ていた。
僕は翼を夢に見ていた。
皆が当たり前のように持っているその大きな翼。
いろんな色に輝く、美しい翼。
僕はそんな翼を、たった一人、持っていなかった。
だから、色んなことをした。
当たり前のことを学んだり、大量の薬を飲んだり。
本当に、色んなことをした。
そして、ようやっと翼を生やした。
でも、思ったような綺麗な翼は生えなかった。
小さくて歪な、今にも腐り落ちそうな翼が生えてきた。
そのうち翼は僕の背中から嫌な音を立てて落ちた。
そして、ようやっとわかった。
僕は最初から、翼を持つべきではなかったのだと。
夢を見るべきではなかったのだと。
そうか。そうだったんだね。
でも、わかっていても飛び立ちたいんだ。
それならせめて、一番美しいところを飛びたい。
飛びたい。飛ぼう。
そして、
ぼ
く
は
飛
ん
だ
。
11/11/2024, 6:00:51 PM