美坂イリス

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一人暮らし、アパートの狭い部屋。それが、私を守る世界だった。

「……」
カーテンの隙間、窓の向こうから、鈍い光が射す。時計を見れば、時刻は七時四分。この寒さだし、きっと外は雪なんだろう。
学校に行かなくなってから、どれくらい経ったんだろう。まあ、カレンダーを見れば分かるんだけども。最初の方は、同級生も気にして時たま様子を見に来ていたけども、それもいつの間にか来なくなった。

ただ一人を除いては。

「っ!」
不意に、携帯電話が鳴る。ああ、メッセージか。
『起きてる? ご飯食べた? ちゃんと食べないと、倒れても誰も分かんないから気をつけてね?』
それは、どこかお母さん染みた文面の、『彼女』からのメッセージ。小さな頃からずっと側にいた、幼なじみからの。
「……ふふっ」
思わず、小さな笑みがもれる。そして、私は携帯電話の、メッセージ履歴を眺める。
毎日、どこまで行ってもそこには彼女の名前が並ぶ。それは、私を気遣う言葉で溢れている。

「……頑張って、みるかな……」

この部屋から出てみようか。彼女の顔を見るために。彼女に、「ありがとう」と言うために。

6/4/2023, 10:18:30 AM