規範に縛られた軟弱根性無し

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好き。
私には好きな女の子がいる。その子の名前はアキナさん。今までどんな時でもアキナさんのことを考えていた。小学校高学年くらいから、高校生になる今までずっと好きだ。そしてもちろんこれからも…。
でも、私の恋はいつまで経っても発展しない。なんでかって?それは単純。これまで話したことが2回くらいしか無いから。しかもその2回は授業でのことで、プライベートで話せたことなんて無い。
好き。好きなの。だから、私は一皮剥けるの。勇気を出して!

「ねぇ、アキナさん」
全力で楽しい毎日。1日の活力が燃え尽きる様に暗くなっていく放課後。あたしは話しかけられた。名前はたしか…ヒナ?だったかな。そんな話したことあったっけ?
「何?あたしに用事?」
「えっと…ね、私アキナさんと話してみたくて」
「話?どんな?」
「それは…」
勢いで話しかけてきたんだろう。話のネタが無いらしい。というか、人と話すことが難しい子なんだろ。
「じゃあ、とりあえず自己紹介でもする?」
「う、うん!」
「じゃあ、あたしは新山アキナ。誕生日は5月13日」
「私は…羽瀬ヒナです。誕生日は7月25日です」
「へぇ〜、誕生日今月なんだね」
「は、はい」
ダメだ話が続かねぇ。
「じ、じゃあさ、好きなこと話し合おう。ヒナは何が好きなの?」
「私ですか?!わ、私は…SF小説が好きです。想像豊かで面白いんです」
「そうなんだね!おすすめのかあるの?」
「はい!例えば…」
などとお互いの好みについて語り合い、ちゃっかり一緒に帰ったり、おすすめ小説を貸してもらったりして、あたしとヒナは割と仲良くなった。

ヒナと友達になって数ヶ月経った。気づけば修学旅行が、あと3週間に迫っていた。
「おはよヒナ」
「おはようアキナさん」
「小説ありがとう。今回のもすごい面白かった!」
「そうでしょう!あれ私のお気に入りなの!」
「それはそうと、ヒナは修学旅行どうすんの?誰かと部屋一緒とか、京都を誰かとまわるとか。決まった?」
「ううん、全然」
「じゃさ、あたしと部屋一緒にならない?京都一緒にまわる人はもう決まってるから」
「わ、私でいいの?!」
「全然いいよ〜。じゃあ一緒の部屋ね!」
「うん!」

修学旅行2日目。2人きりのホテルの一室。ヒナは真剣にあたしと向き合っていた。
「アキナさん」
「なに?改まって」
「私は友達なんて全然いたことなくて、こんな私とずっと一緒にいてくれたのはアキナさんだけで、とっても嬉しいの」
「うん」
「だから…ね、おかしいと思うけど」
「うん」
「私、アキナさんのことが大好きなの!だから私を、アキナさんの恋人にしてください!」
ヒナは耳まで真っ赤にして、涙ぐみながら告白した。多分あたしも、同じようにドキドキしていたと思う。
「ヒナ」
「はい!」
「なんであたしがヒナと一緒の部屋になりたいなんて言ったと思う?」
「それは…なんで?って、仲良くなったから?」
「それはそうなんだけどね…」
あたしはヒナのほおに口をつけた。そして囁いた。
「こうしたかったからだよ?ヒナ。好きだよ」
「アキナ…さん」
「泣かないでヒナ。おいで?」
あたし達は濃厚な夜を過ごした。
(変な意味じゃないよ!)

修学旅行4日目
楽しかった京都巡りの夜。なぜだか知らないけど、ホテルの入り口に呼ばれた。誰だろ。少し肌寒いから早くしてくんないかなぁ。ヒナも待ってるし。
「遅れました!ごめんなさい!」
やっと来た。誰だ?この人?
「えっと〜、あなただれ?」
「わ、私は牧野アスカっていいます」
クラスにいたような…いたっけ?
「呼び出してすみません。でも、どうしても伝えたいことがあって!」
「な、何?」
何これデジャブ。
「小学校から今までずっと!ずっとアキナさんが好きでした!私と付き合ってください!」
やっぱり。そして答えは決まっている。
「ごめん。あなたのこと全然知らないし、付き合えない」
「な、ならせめて友達から!」
「悪いけど、あたしもう彼女いるんだよね」
「…え?」
「ごめんね。じゃあね」
泣き声を無視して、あたしはヒナに会いに部屋へ戻った。



割と良いかな
アスカさんごめんね、めっちゃ負けヒロイン
というかヒロインにさえなれていない




「これまでずっと」

7/13/2024, 12:51:19 AM