「どーこだ」
目を抑えられながら彼に問われた。
「それをいうなら、『だーれだ』では……?」
おそるおそる聞くと、彼が深いため息をついてきた。お気に召す回答ではなかったらしい。
「どこって聞いてるんだから答えろよ、ガキかよ」
「ここはあなたの部屋です、なぜ私は罵倒されているんでしょうか……」
ぱっと離した手の持ち主はつまらなさそうに目を細めていた。
「もっと面白いこと言えよ、期待してたのに」
「それを世間一般では無茶振りというんですよ」
彼の無理難題は今に始まったことではない。なぜか彼は私に面白いこと、楽しいことを要求してくる。
「とりあえず歴史書読みます?面白いですよ」
「……お前やっぱり面白いよな」
ニヤニヤしながら顔を近づけてくる彼に歴史書を押し付ける。勝手に楽しむなら好きにしろと思うが、おもちゃにされるのはごめんだ。
「なあ、お前どこにいるんだ?」
「はいはい、あなたの部屋ですよ。ここにきちんとありますよ」
皮肉屋で、寂しがりで、いじっぱりなあなたの部屋にありますよ。
少年はその言葉を聞いて、自動人形に離れるなよ、と話しかけた。
【ここにある】
8/28/2025, 7:58:52 AM