300字小説
声のプレゼント
イブの日、私は幾つもの舞台に立つ。目の前の幸せそうなカップルに愛の唄を高らかに歌い上げる。
夜、私は一人行きつけのバーで酒を啜る。マネージャーとしてパートナーとして支えてくれた貴方がいた頃は、炬燵で貴方の作るおでんを肴に熱燗を飲んで笑い合っていたけど。
貴方が天に召されてからは、毎年、一人になりたくなくて、朝まで飲んでいる。
カウンターに置いたスマホが震える。画面には貴方の名前。息を飲んで耳に当てると
「もしもし」
貴方の声が聞こえる。
「イブの夜にいつも寂しそうな君を気にして、ある人が電話をさせてくれたんだ」
「いつも見ている。いつも側にいるから悲しまないで」
貴方の声の向こう、澄んだ鈴の音が流れていった。
お題「イブの夜」
12/24/2023, 11:23:22 AM