ななしの倉庫

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※約束

若い頃、大きな戦争に兵士として駆り出され、
何とか戦勝国の一員となった。
だからとて、被害が無かったわけではない。
敵国兵士の悲惨な断末魔が頭に響く。
家族を奪われた母国民の泣き声が木霊する。

いや、私の場合、「お父さんとお母さんを返せ!」という
戦災孤児の声が1番苦しかった。
すまない。戦争をしたがる国を、民間人は止められなかったのだ。
貴族筋の我が家ですら、出来なかったのだ。

罪滅ぼしにもならないだろうが、約束しよう。
私の代をもってして、我が一族を取り潰すことを。
その財産全てを戦災孤児の為に残すことを。

懺悔と許しを乞う手紙に封蝋をし、金庫へ隠す。
少々家族への不満を漏らしてしまったが、これでよい。
あとは、手紙が無事に役目を果たすだけだ。

※過去作品 連動作
「隠された手紙」 「手紙の行方」 「誰かしら?」

3/4/2025, 11:18:15 AM