お題『手紙の行方』
無言でぽんと置かれた小さな紙切れ。
なにこれ。
渡してきたクラスの奴を見れば、そいつは何も語らないし、意味深に笑いもしない。本当になんで回してきたんだよ、と俺は心で思った。
開いてみれば、先生の下手な似顔絵が描いてある。吹き出しそうになって咄嗟に口を抑えた。なんだこの目は。ちょっとズレてんじゃん。鼻の形もリアルな造形に近くてやばすぎだろ。唇もなんかめっちゃ厚いし。
誰に渡せばいいかな、と周りの座席のやつらを思い出す。
後ろのやつは駄目だ、こういうのあんますきじゃない。右のやつは…、まあ、悪くない。
小さく折りたたんで、渡した。
それからの昼休み、「あれ傑作なんだけど!」なんて言いながら、そいつは笑っていた。
「なあ、あれ誰が持ってんの?」
「しらね、オレ白井に渡したし。」
「あの後中村くんに渡したよ。笑ってたし」
次々と名乗りはあげたのだが、結局、手紙は誰の手に渡ったのか分からなかった。
2/18/2025, 11:02:42 AM